男が私の部屋に来て言った。「ほら、出かけるぞ。父親とドライブだ!」
「出てって」私は返す。「あなたは私の家族じゃない」
「はは、冷たいなぁ」男はわざとらしい仕草で肩をくすめる。私は無理やり男の肩を押して部屋からおい出した。「あーあ。せっかくいいところにつれてってやろうと思ったのに」別にいいよ。男は私の部屋のドアを蹴った後、リビングの方へ向かったようだ。ドアに鍵をかけて布団に潜り込んだ。
どのくらい経ったのだろう。寝てしまっていたようだ。足音を立てずにリビングに向かうと男は酒の缶やらビンやらが散らばった机に突っ伏して寝ている。「殺しちゃえば??」突然後ろから声がした。「私自分の手は汚したくないの。てか、誰?」振り向くと可愛らしい女の子が立っている。赤い目にピンクに染まった頬と唇、白い、陶器のような肌に金色のフワフワした髪の毛。黒を基調にしたヒラヒラした服。まるで何処か知らない国の人形のようだ。「私は殺したよ?」そんなことを考えていたら女の子が可愛らしい小さな口を開いた。「だから──」「あっ!私が殺してあげよっか!」名案を思いついたとでもいうように手を叩き、花のような笑顔を咲かす。「言ってることが支離滅裂なんだけど。てか、誰だよ」私の声を無視し、私たちの目の前にいる男の殺し方について楽しそうに不穏なことをぶつぶつと呟いている。「ねぇ!今言った中でどの殺し方がいい??普通のは面白くないでしょ?ねぇ、聞いてた??」女の子が覗き込んでくる。「おーい」その時だった。
「うーん??」男が起きたのだ。「あっ、起きちゃったね、どうする?ラストチャーンス」「それじゃあ」私は少し考えてから言った。「お願いしてもいい?」「おお!!」女の子は嬉しそうにナイフを男の背中に突き刺した。何回も何回も突き刺す。少しすると男は肉片となっていた。「ふぅ」女の子は息を付いた。「ありがとう」「いいってことよ。ねえ、これからどうする?うちくる?」「うん、行きたいかも」「そっか!いいよー!付いてきてよ!」「分かった」女の子がくるりと私に背を向けた。私はその背中に隠し持っていたナイフを突き刺す。「やっぱいいや」
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